近いうちにテレビからドキュメンタリー番組はなくなるだろう

かつて、インターネットが存在しなかった時代には、最新のニュースはテレビやラジオで知るものでした。大事件が起きるとニュース速報や特別番組が編成され、テレビの前にくぎ付けになったものです。テレビが一番早かった、そういう時代がありました。
それが、今はインターネットの方が情報が早いことが多くなりました。インターネットには24時間いつでも情報が流通しているので、あっという間に情報が広がります。一次情報が流通するのもインターネットの特徴です。有名人が結婚などをブログや自身のサイトで発表することも増えました。ニュースを伝えるメディアとしては、インターネットほど最適なメディアはないでしょう。
インターネットがまだまだ細い回線に依存していたころは、テキストや小さな画像しか送ることができなかったので、映像を送信できるというテレビの技術的優位性は崩れませんでした。しかし、ブロードバンド化、PCの高性能化が進み、インターネットで動画を配信したり、生中継することが可能になってきました。今後も高速化がすすみますので、近い将来、テレビの映像を送信できるという優位性は完全に失われることでしょう。


近い将来、技術的にテレビが優位性を失う時代が来るのですが、そうなってもテレビ自体はなくならないように思います。そんな時代でもテレビを見続ける人はいると思います。


まず、高齢者です。いまさらインターネットを使おうなどと思いもしない高齢者の最大の娯楽はテレビです。テレビショッピングで物を買う人の多くは高齢者です。この傾向は今後も団塊の世代が鬼籍に入るまでは続くでしょう*1


次に子供です。大人は子供にインターネットを自由に使わせることに不安がありますので、テレビを見ることを望むでしょう。ただ、子供もある程度の年齢になるとアニメなどよりもゲームを好むので、子供といっても低年齢層となります。


さらに、貧乏な人はこれからもテレビを見続けます。パソコンは安くなったといっても10万円弱しますし、ブロードバンド使用料は最低でも月額4千円くらいかかります。これに対して、テレビは地デジ液晶でも小さいものは2万円以下、一度買ってしまえば民放はタダ(NHKの受信料は年間1万6千円くらい)です。民放が無料である限り、貧乏な人はテレビを見続けるでしょう。


上記のカテゴリに入らない人も、当面テレビを捨てるようなことはないと思います。たとえば、ワールドカップやオリンピックはテレビで見なければ面白くないと思いますし、正月に大勢集まった時にはテレビで紅白歌合戦を見るだろうと思うのです。他にも、朝ごはんを食べながらニュース番組を見たり、作業しながらテレビを付けることはあるでしょう。ただ、テレビの役割は急激に低下するでしょう。


そうするとテレビは、平時は高齢者と子供と貧乏な人のためのメディアとなり、たまにあるお祭りの時だけ大勢の関心を集めるという状態になると予想されるのです。
これがどういうことかというと、ほとんどのスポンサーにとってテレビが魅力のないメディアになるということです。消費が多いのは独身や子育てをしている夫婦ですから、スポンサーはそういった層に対して広告を出したいと考えるものです。逆に、ほとんど消費をしない高齢者、子供、貧乏な人を相手に莫大な広告費を出すというのは採算が合わないからやめる企業が増えてくるでしょう。
テレビは、社会的弱者のためのメディアとなり、新しい番組を作るお金がなくなって、平時はワイドショーやテレビショッピング、そして古いアニメやドラマの再放送ばかりになるのではないかと思います*2


そんななか、テレビから完全に排除されてしまうであろうと想像される番組がドキュメンタリーです。ドキュメンタリー番組を見る人は、大学生くらいから中高年くらいまでの人で社会問題に関心のある人です。このような人たちは、近年、インターネットに移行してしまいテレビをほとんど見なくなりました。そのためか、ドキュメンタリー番組は視聴率がとれません。現に、民放ではドキュメンタリー番組はほとんど全滅状態で、深夜に申し訳程度に流れる程度になっています。これも、夜中の放送ではだれも見ないので、無くなるのも時間の問題でしょう。
今後、ドキュメンタリーはインターネット上のブログや動画にその活動の場を移すことになるでしょう。テレビでは誰も見てくれないような固い内容でも、ブログや動画サイトでは多くのアクセスを集めています。テレビでは採算が合わないけれども、ブログや動画サイトは運営コストも極めて廉価ですのでペイする番組を作ることも可能でしょう。


かつて、ドキュメンタリー番組は儲からないけれども、それでもテレビの看板番組でした。新聞でいうところの社説のようなもので、テレビが社会に対して影響力を行使する機会でした。テレビがドキュメンタリー番組を辞めることは、実はテレビにとってお金には代えがたい大きな損失だと思います*3
テレビがドキュメンタリーから撤退する一方で、インターネット上には多くのドキュメンタリー記事や動画が掲載され、社会に対して影響力を行使するようになるでしょう。インターネットは補完するメディアから、主役へと変わっていくでしょう。


インターネットの影響力がテレビのそれを越える日も近いのではないかと思います。

*1:現在は、一部のお金のある老人もこの層にいますが、今後はお金のある老人はインターネットに移動しますので、お金のない老人だけがテレビに残ることになるでしょう。ただ、あえてお金のない高齢者だけを分ける意味もないので貧乏な人に統合すべきかもしれません。

*2:地方の放送局は既にそうなっていますが・・・。

*3:一部のジャーナリストや報道部の人はそのことに気づいていますが、営利企業である民放にこの流れは変えられないでしょう。