今朝のスーパーモーニングでは資産税の導入を提言していた

※本文の最後にリンクを1件、追加しました。磯崎先生の預金課税論に関するエントリーです。


今朝、作業をしながらつけていたテレビに流れていたスーパーモーニングの特集が目に留まりました。この番組では、財政破たんに関して開設するとともに、資産税の導入を提言していました。この資産税は、簡単に言うと預金課税でして、一人当たり1000万円〜1500万円以上の預金に対して年利2%程度の課税をすべきだというものです。年間にして8兆円程度の税収になるのではないかと推計していました。
預金に対して課税することで、経済効果の全くない国内の預金から、消費、不動産や株式への投資、海外への投資などに資金を移動させることができ、その結果、景気が回復するというものでした。
スーパーモーニングでは、野田財務大臣に提言に行ったそうで、来週くらいにその模様を放送するそうです。


この預金税ですが、実は、いわゆるインフレを強制する効果に近い効果があると思われるので、私も注目していました。大きな違いは3点で、まず第1はインフレは預金だけでなく現金(タンス預金)も同時に目減りするのですが、この預金税だと預金だけ目減りするけれども現金に対しては効果がない、という点です。第2点は、インフレは、インフレを起こす方法が難しい(=かなり乱暴な手段になる)のに対して、預金税は預金の名寄せができればよいだけなので技術的に容易だという点です。さらに第3に、インフレは日本円を保有している人すべてに影響があるのですが、預金税は高額な預金を保有している人だけに影響があるという点です。
この預金税が導入されると黙っていると目減りする預金よりも、金庫を買うなどの消費をしたり、株式や不動産への投資もしくは海外への投資にお金が流れる可能性が高くなります。預金税導入に成功すれば、国債に預金が吸い込まれている今の絶望的な状況を、税収増と経済刺激という形で改善することが可能でしょう。


これに対しては海外に資本が逃げるという反論もあると思います。しかし、現実には資本は逃げません。これほど円高なのに日本人投資家はほとんど外貨を買わないのです。1ドルが86円など素人から見たって明らかに円が強すぎる状態にありながら、また海外の方が明らかに利率が高いにもかかわず、誰も海外投資に切り替えようとしないのです。これは経済的に見れば明らかに不合理な行動なのです。
しかし、日本人にとって言葉の壁はやはり大きく、そのため海外投資に向かわないのです。資産を外貨にしておくと、その国の情勢を常に追いかけておかなければなりませんが、外国語の経済新聞や雑誌を読みつづけるのは面倒です。さらに、実際にその地に住んでいなければ投資の感は鈍るものでもあります。そういった事情を総合すると、海外に投資せず日本で預金した方がいいというのが、日本人の高齢者富裕層の合理的判断なのです。そのため預金税が導入されても海外に逃げる資本はかなり限定的でしょう。


仮に預金が海外に逃げても円安になりますので、日本の輸出産業がさらに競争力を付けます。また、お金は逃げても人はなかなか逃げないので、利息や配当などの形で日本に富が還流します。資本が海外に逃げたとしても日本にとって悪いことは何一つありません。むしろ、どんどん逃げてくれればいいのです。1ドル200円くらいになれば輸出が激増する一方で、輸入が激減します。そうすると日本の若者に仕事が増えますので日本の国内経済にとっては有益です。


そして、預金税の何よりもよいところは、裕福な高齢者から若年貧困層へ再分配できるということにあります。はっきり言うと、裕福な高齢者を狙い撃ちにできる税なのです。
現在の日本が抱える問題は、世代間格差です。既に投資意欲を失った裕福な高齢者が莫大な預金を抱えており、それがそのまま国債に流れ、利息が裕福な高齢者に還流しているのです。つまり、言葉は悪いですが、国債という形で裕福な高齢者が現役世代から税金を巻き上げている状態なのです。現役世代は、年金、医療などの社会福祉国債の利払いという2重の負担を強いられているのです。


預金に課税すれば預金を無理やり消費や投資に向かわせることができれば経済が活発になります(経済が回れば若者の雇用が増えるので若者への所得移転が起きます)し、仮に消費や投資に向かわせることができなくても税収が増えるのでその分だけ国債発行が不要になります。一石二鳥どころか三鳥にも四鳥にもなりそうな方法です。


ただ、最大の問題はこれまで預金税を導入した先進国は存在せず、財務省が預金税についてほとんど研究していないということでしょう。秀才エリート官僚は前例のないことをやりたがりませんので、おそらく難癖をつけて葬り去るでしょう。例えば、銀行業の経営を圧迫するといって銀行業界がこぞって反対することが予想されます(もちろん背後で財務省が操ります。)。むしろ内需が良くなれば銀行も本来の貸付業務に戻れるのですが、日本の銀行にはまともな経済的思考などありません。財務省はあらゆる手を使って預金税を導入させないようにするでしょう。


しかし、我々が忘れてはいけないのは、このままでは近い将来、日本の財政が本当に破たんするという現実です。そして、現在日本が体験している高齢化や好景気の中でのデフレは、未だ誰も体験したことがない現象です。これまで世界中で誰も体験したことのない未曽有の事態なのです。このような事態に対して、これまで誰かがやったことのある対策ではうまくいきません。これまでの政府、日銀の対策がほとんど効果がなかったことで証明されています。


今、日本は誰もやったことのない大胆な対策を取らなければならない時なのです。それを実行できるのか、日本人が試されているのです。それができなければ、アルゼンチンやギリシャのような不名誉な国になるだけです。


※追記
預金税のことを検索していたら、磯崎先生が5年前(正確には8年前)に主張されていました(「財政構造改革と預金課税論(再び)」)。しかも、不良債権問題の再発を防止することもできると主張されています。さすがです。

※追記2
円高と書いてあった部分は円安の間違いです。脳内誤変換です。修正しました。