電子書籍の未来はそれなりに明るい

インターネットを使っているとあらゆる情報が無料だと勘違いしがちですが、そうではありません。情報を集め整理して提供するには、時間と費用が必要ですから、基本的に無料で提供することはできません。無料で提供されている情報には、何らかの意味があるのです。無料の情報は、以下のようにカテゴライズできると思います。

  1. ボランティアの発信する情報
  2. 広告主が費用を負担している情報
  3. 国や自治体が発信する情報


まず、ボランティアの提供する情報があります。インターネットはその発足当初はボランティアが発信する情報の塊でした。今でも、私も含め、ボランティアで情報を提供している人が大勢います。趣味の分野などでは非常に良質な情報を提供されている方も多いです。無料で提供されている情報の質が高い分野では、今後、同じような情報を売るのは困難かもしれません。
ただ、あくまでもボランティアや趣味だからできる話であって、それで生活をしている訳ではないので、いつまでも情報の質と量を維持し続けるのは困難です。


次に、広告主が費用を負担している情報があります。古くはテレビが完全に広告モデルで商売をしていましたが、インターネットの多くの情報も広告モデルです。企業自身が宣伝用のサイトを作成している場合もありますし、検索エンジンポータルサイトに広告を出稿している場合もあります。近年では、著名ブロガーのサイトなどには大きな広告が掲載されていたり、企画記事が掲載されることがありますが、これも広告主が費用を負担している情報となります。このような情報は「広告モデル」と呼ばれ、ITバブルの頃は非常にもてはやされました。当時は、ほとんどのサイトが広告モデルでした。
しかし、バブルが崩壊し景気が後退すると「広告モデル」は振るわなくなりました。「広告モデル」は景気に左右されやすいのです。その他、「広告モデル」は音楽や小説などの芸術には向かない、広告主が情報に対する決定権を有しているなど、問題が多いです。


最後に、国や自治体(特殊法人など)が発信する情報があります。これは税金を使って発信しているものです。これまでも、そしてこれからも一定の情報を発信し続けるでしょうが、全体に占める量は微々たるものです。


ところで、インターネットユーザーが気づかなければならないことがあります。それは無料の情報には限界があるということです。無料の情報だけで何もかもが賄えると思ってはいけません。無料の情報と有料の情報にはやはり大きな差があります。インターネットでいくら検索しても断片的な知識が付くだけで、本を一冊読んだ時のような体系的な知識を得ることはできません。このことは、ほとんどの人が理解していると思います。
世間には消費者はインターネットの情報にはお金を払わないという考えがあるようですが、この考えは正しくありません。必要な情報がそれに見合う価格で売られていれば消費者は買います。かつては音楽ファイルを違法にダウンロードするのが主流でしたが、現在では携帯サイトやアップルから着うたやデータを購入するのが一般的になりました。消費者は価格に見合う内容だと考えればインターネットでもデータを買うのです。


問題は「買い方」と「使い方」、そして何よりも「内容と価格」が重要になります。電子書籍について考えてみると、電子書籍をどのようにして買うか、買った電子書籍はどのように使えるのか、そして何よりもお金を支払う「内容」があるのかが問題なのです。


まず、「買い方」はクレジットカードが主になるでしょう*1。クレジットカードを作れない人に対してはエディやワオンなどが使えるようになっていれば良いでしょう。このあたりの整備はここ10年で既に終わっていると思います。


問題は「使い方」がまだよくわからないところです。電子書籍は、一度買ったらいつでもどこでも読める状態でなければいけません。そうするにはクラウドを利用することが最も優れています。購入情報がIDで管理され、IDとパスワードを入力すればいつでもどこでも、どの端末からでもダウンロードして読める状態にすべきです。そうすれば消費者は安心してお金を払うようになるでしょう。グーグルはこのような方式を採用していますので一般化する可能性が一番高いでしょう。これに対して、アップルやアマゾンは専用端末が必要ですので長期的に一般化するとは思えません。


電子書籍の「内容」は、紙の書籍よりも高い質が求められるでしょう。現在、書店に並んでいる書籍のかなりの部分は、同じような情報がインターネット上に無料で並んでいます。無料で手に入るものに対してお金を支払う人はいません。もともと、多くの出版社が素人並みの内容で小銭を稼ぐ商売をしていたところがありますので、その点は反省していただくしかありません。電子書籍には、無料で閲覧できるサイトよりも高い質が求められます。
また、電子書籍は現在の紙の書籍と同じ「価格」では売れないでしょう。というのも、電子書籍はID管理が前提になりますので、売却したり他人に貸したりできません。家族で共有することも規約で禁止されるでしょう。今のところ印刷も難しいようです*2。そうなると電子書籍は財産として考えると現在の紙の書籍よりも制限が多いのです。紙の書籍と同じ価格では多くの消費者は紙の本を選ぶでしょう。「価格」は電子書籍に見合ったものにしなければなりません。


電子書籍の普及に関して現時点で技術的な問題は一つもありません。あとは、消費者が求めているものを適切な手段を使い、適切な価格で提供するだけです。そうすれば、電子書籍はかなり普及するでしょう。

*1:今更クレジットカードを作りたくないという人を相手にする気にはなれません。携帯電話と同じですからインターネットの利便性を享受したいならあきらめて頂くしかありません。

*2:ただし、将来的には印刷も可能になるかもしれません。全部をプリンターで印刷するような無駄なことをする人はまずいません。