世論調査の裏側

大手マスコミは、年に数回、世論調査を行っています。調査内容は直近の政治課題などいろいろありますが、基本的には内閣支持率を調査することがメインとなります。選挙が近いときは選挙の予測も行っています。


世論調査のアルバイト
私は、学生の頃、何度かアルバイトとして世論調査に参加したことがあります。案外、世論調査について知らない人が多いようなので、世論調査の裏側を記事にしようと思います。
なお、私は現在はマスコミに関係していませんので、現在のことはよくわかりません。これは10年以上前の話です。ただ、世論調査の手法は今もほとんど変わっていないと思います。


日本にはいろいろな人がいる
世論調査の名簿は、通常、国政選挙の選挙人名簿から無作為抽出されます。調査方法は、名簿に掲載された人の家を訪問する方法と、電話で聞き取る方法の2種類ありますが、電話が一般的です。戸別訪問するのは選挙の時くらいです。
調査対象は20歳以上の人で、全国各地に散らばっています。私も、北海道から沖縄の、大学生から100歳近いおばあちゃんまで、いろいろな人に電話しました。ただ、選挙権がないので調査対象には外国人は一人もいません。
日本にはいろいろな人がいます。東北(特に青森、秋田、山形)のお年寄りは何を言っているのかさっぱり分かりませんでした。東北の訛りは最強です。このような時は、それぞれの地域出身の人に電話をかわります。電話で訛りを解読している姿を見ると、電話で英語を話している人を見る時と同じ感覚になります。
怖い思いをすることもあります。調査対象が暴力団員だった場合もあります。「兄ちゃん、どこに電話してるのかわかってんのか。」と凄まれたりしましたが、このときは調査に協力していただけました。友人は訪問調査でヤクザの自宅を訪問してました。日本にはいろいろな職業があります。
一人暮らしの老人に電話してしまうと、なかなか大変です。暇で人と話をしたくてしょうがないので、人生相談というか、どうでもいい話を聞かされます。それこそ、息子の嫁の話とか、近所の猫の話など、質問とは一切関係ない話が延々続きます。質問が終わらない限りこちらから切ることはできませんので我慢して聞くのですが、2時間、3時間と電話をし続ける事になります。電話中はトイレに行けないのがしんどいです。
このバイトのおかげで、見ず知らずの人に突然電話することが苦にならなくなりました。引っ込み思案の大学生は一度やってみると良いと思います。怒鳴られてトラウマになる人もいるようですが・・・。


一度で終わると思うな
無作為抽出で名簿を作るにはお金がかかるので、同じ名簿を何度が使います。そのため、一度調査を受けても、数カ月後にまた調査の電話が来ることがあります。調査対象となってしまった方には諦めていただくしかないのですが、1年に3度目ともなると、怒られることが多くなります。殆どの人が怒っているので調査内容にバイアスがかかるのが分かります。マスコミもわざとやったりはしないと思いますが、3度目の調査だと内閣支持率は下がると思います。


ほとんどストーカー
期間は調査内容によりますが、通常は2〜3日程度です。電話調査の場合は、ひたすら電話をかけ続けます。回答を回収できない場合、時間を改め、日を改めて、最大で10回程度は電話をします。仕事ですが、ほとんどストーカーです。最初の頃は紳士的に断る方も、最後は怒鳴ります。たまに本社まで抗議に来る人もいます。
仕事で電話している側は、命令でやらされていますので、時間が許す限り諦めるということはありません。調査対象になってしまった場合は、諦めてその場で回答した方が良いと思います。


社員は電話をしない
調査をしているのは、殆どが大学生のアルバイトです。質問が記載されたペーパーを読みながら質問し、回答用紙に回答を記入していきます。新聞社の社員と勘違いして長々と意見を述べられる方が10人にひとりくらいの割合でいますが、全く無意味です。アルバイトは、最後の結果の部分しか記録しません。
基本的にマスコミの社員はほとんど電話をかけません。社員が電話をかけるのは新入社員の研修と調査対象者とトラブルになった時くらいでしょう。マスコミに意見がある時は代表電話に電話しましょう。代表電話は社員が出ますし、きちんと意見を言えば、担当者に伝えられます。場合によっては、担当者に電話をつなぐ場合もあります。


調査のやり方で結果にズレが生じる
調査内容は、マスコミがそれぞれ独自にが決めます。統計学政治学を専門とする大学教授などに意見を求める場合もあるようですが、よくわかりません。質問項目はおよそ30項目くらいです。質問結果は公表されるものと公表されないものがあります。
マスコミによって、質問の聞き方や順番である種のバイアスがかかる場合があります。例えば、回答に支持する、支持しない、どちらでもないの3種類から選ぶ場合と、支持する、支持しないの2種類から選ぶ場合では、後者のほうが支持率が高くなる傾向があります。また、内閣支持率を調査する場合、最初の質問で内閣支持を調査するのと、最後の質問で調査するのでは、前者のほうが後者よりも支持率が高くなる傾向にあります。
そういった部分は国民にはわかりませんので、1社のの調査結果を鵜呑みにせず、他者と比較することが大切です。調査結果は一般的に5%前後のズレがあります。


調査結果が異なる理由
調査では、まず「〇〇新聞」や「〇〇テレビ」と名乗ります。その瞬間に、「〇〇新聞はキライだから協力しません」という方がいます。結構頑固で、何度電話しても応じてくれない人もいます。感覚としては、野球チームのオーナーとして有名な東京の新聞社が一番嫌われているようで、名乗った瞬間に切られることが多かったです。各社で数字に違いが出る理由のひとつだろうと思います。
こちらが質問すると、「あなたはどう考えますか」と逆に質問してくる人もいます。どうも、自分の意見がなく、その新聞やテレビの論調に合わせたいようなのです。商売をされている人なども、その会社の論調に合わせようとする傾向があるように感じます。これも、各社で数字が違う理由のひとつだと思います。


その他、大学生のアルバイトがいろいろな苦労をしながら地道に回答を集めて出来上がるのが世論調査です。最初はいい加減にやっているのではないかと思っていましたが、かなり真面目にやっていました。アルバイトのお金は、1日朝から夜まで拘束されて6千円〜1万円程度でしたが、毎回、そのまま飲みに行ってすぐに使ってしまうのが常でした。