佐藤秀峰さんの革命

ブラックジャックによろしく」や「海猿」などで有名な佐藤秀峰さんは、マンガをインターネットで販売するなど、各方面でニュースを提供される漫画家として有名です。私はあまりマンガを読みませんが、佐藤秀峰さんの動向にはとても注目しています。


その佐藤秀峰さんが、近頃、漫画を書いているところをUstreamで生中継しています。驚きました。これは非常に画期的なことです。


昔、多くの漫画家は、手塚治虫に憧れ、トキワ荘で漫画の描き方を学びました。このころは、マンガの描き方は、師匠から教わるものでした。手塚に憧れた少年たちは、マンガを描いている手塚の横でじっと見ていたそうです。
トキワ荘出身の石ノ森章太郎は、「石ノ森章太郎のマンガ家入門」を出版し、日本中で漫画の描き方を知ることができるようになりました。基本的な技術は誰でも身につけることができるようになりました。当時の漫画家志望の人には革命的なことであったと思います。漫画家志望のバイブルと呼ばれたりしました。マンガを描く層を爆発的に増加させました。
鳥山明も同様の「鳥山明のヘタッピマンガ研究所」を描いています。ギャグマンガの描き方に特化していましたが、上記の「石ノ森本」が全てではないということを世に知らしめたものでもありました。「石ノ森本」の権威が高すぎた漫画家志望者の間では革命的だったようです。
その他、マンガの描き方を描いたマンガやハウツー本はたくさん出版されてきました。その結果、マンガの描き方は、日本中に広がり、多くの漫画家及び漫画家予備軍が誕生しました。日本のマンガ文化は、マンガの描き方を一般に流通させたことがとても大きかったと思います。


そうはいっても、本で読んでわかることと、現実に描いているのを見てわかることの間には、大きな違いがあります。どんな仕事でも、座学だけではプロにはなれないものです。しかし、実際に漫画家が描いているところを見ることができたのは編集者やアシスタントなど、ごく限られた人だけでした。そのため、多くの漫画家は、実際に見なければ学べないプロの技術を学ぶために漫画家のアシスタントになっています。こうして、漫画家の師弟制度は維持され続けました。


このような師弟制度によってマンガ文化の広がりに限界が生まれていました。日本にいなければアシスタントになることはできませんので、世界各地のマンガのクオリティはあまり上がりませんでした。アシスタントという経済的に過酷な状態に身をおかなければならないという点も辛いものがあったでしょう。アシスタントの方が忙しくてデビューしにくい状態が生まれ、漫画家になることを諦める人も多いようです。


今は世界の何処にいても佐藤秀峰さんが描いている様子をみることができます。質問があればツイッター(@satoshuho)ですぐに質問できます。それはまるで手塚治虫にマンガの描き方を教わっているトキワ荘の面々と同じです。
最前線で活躍している漫画家が描いているところを無料で見ることができるのです。もはやアシスタントにならなくても良いかもしれません。漫画家の近くにいたからといってデビューできるものではないし、むしろデビューしにくくなるという微妙な状態から開放されることでしょう。


これは漫画界にとって大きな革命だろうと思います。


石ノ森マンガ学園 (ホーム社漫画文庫)

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鳥山明のHETAPPIマンガ研究所 (ジャンプコミックス)

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