衆参同日選挙を義務付けるのは不可能です。(追記あり)

※池田先生のコメントを受けて追記しました。


池田信夫先生*1が、無茶なことをおっしゃっています。

私は、最小限の制度改正でできる「近道」として、衆参同日選挙を義務づけてはどうかと思う。具体的には、公選法を改正して「首相が衆議院を解散したときは、選挙は次の参院選と同時に行う」と決めるのだ。これによって、2013年までに衆議院を解散した場合は、2013年の参院選と同時に総選挙を行なう。こうすれば衆参の多数派が一致するので、ねじれが起こる確率は低くなる。

確かにねじれは起きなくなると思うのですが、解散から選挙までの空白期間はどうなるんでしょうか。
通常、内閣総理大臣衆議院を解散するのは、衆議院の任期満了に近い場合か、衆議院の多数派の支持を得られない場合のどちらかです。


衆議院の任期満了に近くなってから解散した場合、近くに参議院議員選挙がなければ衆議院の任期が延びることになります(もしくは参議院の任期を短縮することになります)。しかし、衆議院参議院ともに任期は憲法に定められています(憲法45条、46条)ので憲法改正なしに任期を伸ばしたり短縮したりすることはできません。衆参同日選挙を義務付けるには憲法改正が必要です。


次に、衆議院過半数の支持を得られなくなった場合は、次の参議院議員選挙までの最長3年間、政治が完全に停止します。法律がいっさい通らなくなるのはもちろん、衆議院の優越も意味がなくなるため予算や条約さえ成立が危ぶまれます。完全な政治的空白が生まれますので、最悪の場合クーデターのようなことが起きるかもしれません。


残念ながら、現在の日本国憲法下ではどう頑張っても政権は安定しません。さらに興味のある方は、以前のエントリー「日本の内閣総理大臣はなぜ短命なのか」を読んでいただければさらに理解が広がると思います。強いリーダーシップを必要とするなら憲法を改正するしかないのです。


この国では政権が安定するのは奇跡なのです。国民は奇跡が起きるのを祈るしかないのです。


※追記
池田先生の記事にトラックバックしたところ、以下のようなコメントがありました。

TBで「不信任案が可決されたらどうするのか」とか「参院選の前に衆議院の任期が終わったらどうするのか」という質問がありますが、そういう場合は憲法に従って選挙すればいい。ここでいうのは「7条解散」を制限するという趣旨です。


上記の記述は、いわゆる7条解散(=69条解散以外の解散)の場合を前提として考えています。
さらにいうと、憲法54条1項は、「衆議院が解散されたときは、解散の日から40日以内に、衆議院議員の総選挙を行ひ、その選挙の日から30日以内に、国会を召集しなければならない。」と定めています。
そもそも、選挙を延期すること自体、ほぼ不可能です。可能なのは、衆議院解散の日から40日以内に参議院選挙がある場合だけですが、そういった場合は現状でも事実上同日選挙になっています。仮に池田先生の主張される制度が現行憲法に適合する範囲で導入されても、ほとんど適用されることはないでしょう。


日本国憲法は徹底的に内閣の権力を弱めているのです。この憲法の下では大胆な変革など求めるべくもありません。奇跡が起きても小泉改革程度が限界なのです。

*1:電波利権に関しては本当に素晴らしい本を書かれているのですが、経済や政治に関する発言は微妙です・・・。