iPadはあまり売れないと思う

iPadの発売でお祭り騒ぎでしたが、少し冷静になってきましたね。既存メディアもブログもtwitterも大騒ぎでした。さすがAppleです。世界に無数の企業がありますが、新商品を発売する度にお祭りになるのはAppleだけでしょう。
では、話題のiPadは、どれくらい売れるのでしょうか。iPadの問題点を検討して、どのくらい売れるのかを考えてみます。


問題点1 iPadにはキーボードがない
iPadには、キーボードがありません。不可能ではないにしろ、文書作成はかなり困難です。新幹線や飛行機の中ではソフトウェアキーボードは使い物にならないでしょう。ビジネスマンの出先の空き時間で文書作成という需要を満たすことはできないのではないかと思います。
キーボードも携帯するという選択肢もありますが、荷物が増えますし、忘れると面倒なので素直にノートパソコンを選ぶ人が多いのではないでしょうか。


問題点2 iPadは大きく、重たい
iPadのサイズはB5サイズくらい、重さは約700グラムです。スマートフォンよりもかなり大きいので、スマートフォンのかわりに携帯するのは現実的ではありません。
700グラムというのは最軽量のネットブックとあまり変わらない重さです。キーボードも一緒に持ち運ぶならばネットブックの方が軽いしスマートだと思います。また、実際にiPadを使ったユーザは、長時間使っていると重くて肩がこるという感想を述べています。


問題点3 iPadは電話ができない
iPadは携帯電話ではないので電話ができません。Skypeは使えますが、携帯電話のような即時感はありません。iPadと携帯電話を両方携帯することになりますが荷物が増えるのは嬉しいことではありません。特に電車通勤が一般的な日本では、カバンが700グラム重くなるという事実はかなり厳しいのではないかと思います。


問題点4 iPadランニングコストがかかる
iPadは、どこでも使えることに意味があるツールです。家やオフィスなど決まった場所でしか使えないならその魅力は大きく失われるでしょう。
iPadをどこでも使えるようにするには、3Gモデルならソフトバンクモバイルとの契約が必要になりますし、Wi-FiモデルならモバイルWi-Fiルーターが必要になります。3Gモデルではプリペイド契約もあるようですが、通常は月額数千円のランニングコストが必要になります。iPadは、購入の時点で将来にわたる支出を覚悟する必要がある商品といえるでしょう。


問題点5 iPad電子書籍リーダー?
iPad電子書籍リーダーと考えている人もいるのではないでしょうか。ソフトバンクiPad発売と同時にビューンという新聞や雑誌などの記事を配信するサービスを開始しました。しかし、ビューンが配信する新聞や雑誌の記事は、インターネットや携帯電話でもかなりの部分を読むことができます。
一部にiPadでなければ読めない記事もありますが、それは一時的な問題に過ぎないのではないかと思います。近い将来、新聞社や出版社は電子出版に踏み切ることでしょう。年老いた経営者がいくら拒んでも、ここまで売れなくなれば、電子出版せざるを得ない日が近く必ず来ます。新聞や雑誌も音楽配信と同じ運命を辿ることでしょう。その時、リーダーをあまり普及していないiPadだけに限定することなどありえません。パソコンの方が圧倒的に普及しているのですから、必ずパソコンで読めるようにするでしょう。
満員電車の中で使うのであればiPadが便利かもしれませんが、混み合う車内でテキストを読むならスマートフォンの方がはるかに便利でしょう。


以上のように、iPadには多くの問題があるのですが、では、iPadはどのような人が買うのでしょうか。


1 iPadに乗り換えるか
まず、ネットブックユーザやスマートフォンユーザは、iPadに乗り換えるか、考えてみます。まず、iPadで出来ることはほとんどネットブックでできますが、ネットブックで出来てiPadでできないことが多いです。次に、携帯性はiPadよりもスマートフォンの方が格段に優れています。iPadはノートパソコンやスマートフォンと比べるとどうしても機能が中途半端なので、ノートパソコンやスマートフォンからの乗り替えはほとんど期待できないのではないかと思います。


2 新しい需要はあるのか
それでは、ノートパソコンもスマートフォンも買わない人がiPadを買うということがあるのでしょうか。iPadは新しい需要を掘り起こせるのか、という点を考えてみましょう。
世の中にはノートパソコンやスマートフォンを使わないという層が存在しますが、これは主に情報に敏感ではない層か、情報に敏感だが経済的に余裕がない層です。
情報に敏感でない層は最後まで紙の新聞や雑誌を買い続ける層と紙の新聞や雑誌さえ買わない層に分けられますが、いずれにせよ新しい情報をさほど必要としていないので最新の情報ツールであるiPadを買うことはないでしょう。これに対して情報に敏感だが経済的に余裕がない層はiPadを買う可能性があります。少なくともiPadに興味を持っているでしょう。ただ、現時点でスマートフォンよりもランニングコストがかかるであろうiPadを選ぶ人は少数派だろうと思います。


日経新聞などの記事によると、iPadを電子教科書リーダーとして利用するという案もあるようですが、実現性には多くの疑問が多くあります。電子教科書リーダーとしてiPadを配るお金があるなら、教材としてネットブックを全員に配った方が教育効果は高いでしょう。
これからはキーボードでテキストを入力する能力が不可欠になりますので、ブラインドタッチは読み書きと同じレベルで全ての人に教えなければならない能力となるでしょう。教材として3万円程度の安いネットブックを中学生ないし高校生全員に配布し、同時に教科書も電子化するというのであれば決して税金の無駄遣いではないと思います。しかし、電子教科書リーダーだけではキーボードがない分だけ教育的意味が減少します。


iPadの登場は、ノートパソコンやスマートフォンに大きな影響を与えることでしょう。
例えば、iPadのタッチパネルは便利ですから、その機能をノートパソコンに装備する可能性はあるでしょう。タッチパネルを装備すればトラックパットは不要になるので、ノートパソコンはより小さくなるでしょう。
スマートフォンは、テキストリーダーとして使いやすくするために今よりも大型になるかもしれませんし、iPhoneのような全面液晶タッチパネルが主流になるかもしれません。
これらの点はiPadの功績(iPhoneの功績と言った方が正しいですが・・・)として長く語り継がれるかもしれません。
それでも、iPadそのものが一般の人に普及することにはならないと思います。


結局、iPadを購入するのは、現時点では経済的に余裕があって情報に敏感な人に限られるのではないかと思っています。
とてつもなく面白いゲームがiPad専用で発売されるというようなことがあれば話は別かもしれませんが、その可能性はとても少ないように思います。


iPadの将来は、厳しいといわざるを得ません。